東京地方裁判所 平成6年(ワ)20870号 判決 1995年3月24日
フランス国
パリ 七五〇〇八 アヴェニュー モンテーニュ 五四
原告
ルイ・ヴィトン
右代表者
総支配人 ダニエル・ピエット
右訴訟代理人弁護士
高松薫
同
岡本好司
同
鈴木銀治郎
同
中野通明
北海道室蘭市祝津町三丁目二七番一二号
被告
青山保男
主文
一 被告は、原告に対し、金三〇七万円及びこれに対する平成六年一一月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを四分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
この判決の第一項は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 請求の趣旨
一 被告は、原告に対し、金四〇七万円及びこれに対する平成六年一一月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は、被告の負担とする。
三 仮執行宣言。
第二 請求原因
一 原告の商標権
原告は、平成五年九月五日まで、次の商標権(以下一括して「本件商標権」といい、左記(一)、(二)の各登録商標を「本件商標(一)」、「本件商標(二)」などという。)を有していた。
(一) 登録番号 第一四一九八八三号
出願日 昭和五一年二月四日
出願公告日 昭和五四年一〇月二五日
出願公告番号 昭五四-〇三七一七〇号
登録日 昭和五五年六月二七日
更新登録日 平成二年八月二九日
商品区分及び指定商品
平成三年政令第二九九号による改正前の商標法施行令別表(以下「改正前別表」という。)所定の第二一類
装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉およびその模造品、造花、化粧用具
構成 別紙(一)記載のとおり
(二) 登録番号 第一四四六七七三号
出願日 昭和五一年一一月九日
出願公告日 昭和五五年五月一五日
出願公告番号 昭五五-〇一九七五一号
登録日 昭和五五年一二月二五日
更新登録日 平成三年八月二九日
指定商品 改正前別表第二一類 かばん類その他本類に属する商品
構成 別紙(二)記載のとおり
二 被告の侵害行為
被告は、古川智則と共謀して、平成三年三月ころ、かばん、財布類に本件商標(一)、(二)と同一の標章を付し、また、これを付したかばん、財布類を、東京都新宿区百人町二丁目一番一八号青木宏榮方 金泰浩をはじめ、第三者に販売し、原告の本件商標権を侵害した。
三 損害
1 被告の得た利益相当の損害
被告は、前記二記載の販売行為により、少なくとも一二七万円の利益を得た。
2 信用毀損による無形損害及び慰謝料
(一) 原告は、一八五四年、世界最初の旅行鞄店として設立され、以来、極めて堅牢なファッション性に富む高級なかばん類、袋物類を販売している。
原告は、かばん類、袋物類をフランスにおいて製造し(以下「原告商品」という。)、原告の日本における子会社がこれを直輸入し、子会社の直営店六店及び特約店二六店において販売しているが、原告は原告商品の品質の保持管理に努めているほか、商品イメージの維持のための広告はしても通常の販売促進のための広告はせず、バーゲンセールも行わないため原告商品の需要者間における信用は厚い。
本件商標(一)、(二)は、一八六九年偽造防止のため発表使用され、以後長年にわたる原告の企業努力により、世界的に著名な商標となり、日本国内においても、取引者、需要者間で広く認識され、極めて強力な顧客吸引力を取得している著名標章である。
被告が本件商標(一)、(二)と同一の標章を、酷似的に模倣した偽造商品に付して安売りした行為により、原告が築いてきた一流ブランドとしての名声や原告商品に対する信用が毀損され、原告は無形の損害を被った。
(二) 右損害を金銭に評価すると、その金額は、二〇〇万円を下らない。
3 弁護士費用
原告は、本件の解決を原告訴訟代理人弁護士に訴訟委任し、その報酬として、八〇万円の支払いを約した。
四 よって、原告は、被告に対し、民法七〇九条、七一九条、商標法三八条一項に基づき、損害賠償として、四〇七万円及びこれに対する不法行為の後であり訴状送達の日の翌日である平成六年一一月一七日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
第三 被告は、適式の呼出を受けながら、本件口頭弁論期日に出頭しないし、答弁書その他の準備書面を提出しないから、請求原因一ないし三の事実を自白したものとみなす。
右事実によれば、原告が被った無形損害の額としては、一五〇万円が相当であり、被告の本件商標権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用の額としては、事案の性質、経過、進行状況その他一切の事情を考慮すれば、三〇万円が相当であり、これらを超える金額を相当と認めるに足りる証拠はない。よって、これらに被告の得た利益相当の損害金一二七万円を加えた原告の損害の合計は三〇七万円となる。
第四 結論
したがって、原告の本訴請求は、三〇七万円及びこれに対する不法行為の後であり訴状送達の日の翌日である平成六年一一月一七日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 西田美昭 裁判官 高部眞規子 裁判官 櫻林正己)
別紙(一)
<省略>
別紙(二)
<省略>